浜岡原子力発電所運転終了・廃止等請求訴訟弁護団より ~ご挨拶~

私たちは中部電力を被告とする浜岡原発の運転終了・原子炉の廃止等を求める裁判の弁護団です。静岡県弁護士会に所属する弁護士有志119名、愛知県弁護士会に所属する弁護士有志126名、他の弁護士会に所属する弁護士32名の合計277名(2012年12月11日現在)で構成されています。
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【2011年8月7日】浜岡原発を考える講演会(第1回)を開催しました

2011 年 8 月 8 日 月曜日 投稿者:浜岡原発運転終了・廃止等請求訴訟弁護団

2010年8月7日(日)午後1時30分から、静岡音楽館AOIにて、「浜岡原発を考える講演会(第1回)フクシマの報道されない真実~福島第一原発事故がもたらした悲劇~」を開催しました。一言で報告しますと、福島の事故及び浜岡原発に対する静岡県民の関心の高さを、あらためて肌に感じることのできた会でした。200名に迫る多くの方が参加され、用意した席が足りず椅子を追加で並べる盛況ぶりでした。

基調講演では、まず、福島県いわき市の渡辺淑彦弁護士から、原発の地元自治体が事故前から抱えていた構造的な問題,事故後の地元産業の被害,個人的な生活の変化、地元の弁護士に届く原発被災者の声などが紹介されました(詳しくは当日配布のレジュメ資料をご参照下さい。)。

続いて、福島県郡山市の渡邊純弁護士から、子どもを抱える親として直面した苦悩を中心とした報告と、原発事故は公害問題であり、人災であり、安心して住み続けられる福島を取り戻すために国と東電が責任を持つべきだというお話がありました(詳しくは当日配布のレジュメをご参照下さい。)。

また、本日の講演会には、静岡県下の首長、県会議員、市議会議員のみなさまにご来賓としてお越しいただき、8名の方にご挨拶をいただきました。どなたからも、浜岡原発は絶対に容認できないという強いお言葉をいただきました。

さらに、当弁護団の青山雅幸事務局長から浜岡原発を危険であると考える理由の報告がありました。冒頭、政府や東電が福島第一原発の事故原因の究明を尽くさず、ごまかそうとするのであれば、それは、先日発生した中国の高速鉄道事故で中国政府が事故車両を土に埋めようとしたことと同等のことで、許されざる事態であると厳しく批判をしました。

当弁護団の葦名ゆき弁護士がコーディネーターをつとめたパネルディスカッションでは、パネラーの渡邊純弁護士から、仮に金銭的な賠償がなされたとしても、原発の近隣の人々の多くは第一次産業(農業、漁業、畜産業など)に就いており、金をやるから別の土地で再出発をしろといわれてもできないという切実な声が報告されました。また、原発被災者は、放射性物質は目に見えないためとても怖いけれど、自宅に戻りたい、しかしやはり怖いというジレンマにおちっているとの報告もありました。
渡辺淑彦弁護士からは、心から愛していた美しいふるさとの土地が汚されて、なんと表現してよいか分からないぐらいに悔しいという発言がありました。今回の事故は、国策で、経済的に弱い地域に原発が建設された結果なのであるから、国は何年かかっても、責任を持って福島にもとの環境を取り戻すべきだ。どうせ20キロ圏内には立ち入ることができないのだから、放射性廃棄物を福島県に埋めようなどという議論が出ていると聞くが、驚愕しているし、冗談じゃないという思いである。良い環境に住み続けることがすべての前提であり、それが原発事故によって覆されたことが非常に悔しいという発言もありました。

その後、原告3名が登壇し、原告となった理由、思いなどをお話しました。

1人目は県内の産婦人科の医師の方でした。原告になった理由について、要旨、医師は自身の能力を超えた手術や医療行為をすべきでない。しかし、原発は安全性を確かめることが不可能な人智を超えたものである。原発のいわゆる「専門家」にも原発事故は対処不可能な領域で、それに対する知識も対策も持っておらず、右往左往している現実が福島第一原発事故で露呈した。不幸にして今回被害にあわれた方々を犠牲にしてそれが明らかになった。胎児・新生児は極めてもろく、感受性が高く、絶対的な保護が必要な存在で、妊婦の安全確保が必要なことも明らかである。毎日多くの妊婦、新生児をみている医師として、それらの人々に危害を加えることが明白な原発の存在を決して認められない、との発言がありました。

2人目は県内の主婦の女性の方でした。要旨、福島第一原発の事故まで自分は原発のことを何にも知らなかった。今はインターネットなどを通じて様々なことを学んでいる。原発は今の日本にあってはならないものだという思いを強くしている。事故後、自分にできることをと考えて、署名をしたりパレードに参加したり三上市長に応援メールを送ったりした。勉強会や講演会にも行き、自宅に脱原発のポスターを貼り、近所の人とも原発について話すようになった。体感では7~8割の人が原発に反対だと思う、との発言がありました。

3人目は三上湖西市長でした。
まず、県内の首長らも、議員らも、福島第一原発の事故を受けて原発の危険性を認識しつつあり、浜岡原発反対の仲間が増えるたしかな手ごたえを感じているとのお話がありました。
また、反原発のイベントなどで、市民の方から、何かしたいけれど何から行動すればよいかという声をよく聞くが、原発を始めたのは政治家なのだから、止めるのも政治家である。政治に期待し、政治家に自分の意見を伝えて欲しいという要請がありました。

最後に鈴木敏弘団長より、弁護団形成及び訴訟提起へ踏み出した経緯と、放射能汚染で、家も農地も家畜も工場も店も、すべてを奪われて避難を余儀なくされた福島の被災者のことを忘れることなく、これからの人生を生きる子どもたち、さらには、これから生まれてくる人たちのために、危険な原子力発電所を1日でも早く廃炉にしなければならない、そのために私たちは声を上げ続けるとの決意が語られました。そして、大石康智事務局長の「浜岡を絶対止めてみせます」という力強い宣言で閉会しました。