浜岡原子力発電所運転終了・廃止等請求訴訟弁護団より ~ご挨拶~

私たちは中部電力を被告とする浜岡原発の運転終了・原子炉の廃止等を求める裁判の弁護団です。静岡県弁護士会に所属する弁護士有志119名、愛知県弁護士会に所属する弁護士有志126名、他の弁護士会に所属する弁護士32名の合計277名(2012年12月11日現在)で構成されています。
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【2012年9月20日】仮処分申立てについて記者会見を行いました

2012 年 9 月 28 日 金曜日 投稿者:浜岡原発運転終了・廃止等請求訴訟弁護団

2012(平成24)年9月20日に行った記者会見要旨

私たち浜岡原発運転終了・廃止等請求弁護団は、昨年7月1日に静岡地方裁判所に浜岡原子力発電所の3~5号機の運転終了、使用済核燃料の安全な保管などを求める本訴を提起しました。昨年3月11日の福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電は人力では制御できないものであること、電力会社が想定している値をはるかに超える地震動や津波が原子力発電所を襲うことが現実にあること、原子炉を冷やし続けることができなければ炉心溶融を引き起こし、途轍もなく大量の放射性物質が環境にまき散らされ、多くの人々が故郷を、生活基盤を失うことを知りました。

浜岡原子力発電所は、想定東海地震の震源域の真上に設置されていますので、世界で一番危険な原発と言われています。政府は、昨年5月6日、中部電力に対し、浜岡原発の全号機の運転停止を求めました。そして、中部電力は、5月9日にこれを受け入れました。訴訟では、私たちは、福島第一原発の事故の教訓として、少なくとも東日本太平洋沖地震と同程度の地震が浜岡原発の直下で起きうることを考慮して原発の安全性が保たれるのかを審査しなければならないこと、1000年に一度とか1万年に一度というような稀な地震であっても、起こり得るということを考慮しなければならないということを主張してきました。津波の危険性も指摘しました。液状化の危険性も指摘しました。これに対し、中部電力は、国の安全審査指針に通っているから安全だという主張を繰り返しています。内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の第一次報告が今年3月31日に公表されました。それによれば、東海、東南海、南海のいわゆる3連動の地震が起きうること、それはマグニチュード9クラスであること、御前崎市付近では最大震度が7であること、津波が21mにもなるということでした。この第一次報告を見れば、浜岡原発の存続は無理だと中部電力も理解するだろうと、私は、期待しました。
しかし、中部電力は、この第一次報告を無視しています。中部電力は、何の根拠もないのに東京湾平均海面18mの防潮堤を作るから、それで津波対策は十分であるという姿勢を崩しません。政府が、福島第一原発を襲った津波の高さである15mの津波を想定して対策を立てるように指導したようですが、高さ15mの津波を想定し、18mの防潮堤を作ると言っているだけです。訴訟では、中部電力は、8月末に公表される第2次報告のデータを入手し、それを検討しないと安全性についての主張ができないと言っています。それでいて、18mの防潮堤の工事を続けています。結局、中部電力は、訴訟の引き延ばしをしている間に防潮堤を完成させ、訴訟の結論が出る前に再稼働させようとしているのです。なお、第2次報告は先日の8月29日に公表されました。浜岡原発付近の津波高は19mとされました。それでも中部電力が作っている18mの防潮堤を超えます。超えたら、私たちが主張しているように原発溜池ができるのです。
そして、政府も、安全審査の指針を変えることなく、大飯原発3、4号機の再稼働を認めてしまいました。

こうした中部電力のかたくな姿勢、そして、政府の判断のいい加減さを知るにつけ、私たちは、浜岡原発の再稼働を禁ずる仮処分の申請をしなければならないと考えるようになりました。地震に耐えられないだろう3,4,5号機の再稼働を阻止しなければなりません。また、5号機については、駿河湾地震で想定外に大きな地震動を観測したといいますし、昨年5月14日には、運転を停止する際に、復水器内の管が破損するという信じられない事故も起きています。その破損のために原子炉内に海水が流入しているのです。海水の流入は大変なことです。あの福島第一原発事故の際、東京電力は、海水を入れての冷却に強く抵抗しました。それは、海水を原子炉にいれたら廃炉しかないということが常識だからです。海水が流入した原子炉は、廃炉しかないと考えます。さらに、4号機の配管で施工ミスが最近見つかったと言います。施工ミスがここだけだという保障はありません。ほかにも施工ミスがあるだろうと考えるのが常識でしょう。

私たちは、多くの皆さんに呼びかけて、仮処分の債権者、申立人になってもらおうと考えています。当初の予定では、本日、仮処分の債権者を募集することを公表し、説明会の日程を発表することにしていました。
その日程を変更することとしました。
それは、県民投票条例についての県議会の審議が昨日始まったからです。
「原発県民投票静岡」が集めた署名は、有効署名数が16万5127人でした。このようにおおぜいの方々が、浜岡原発の再稼働について、自分たちの声を直接表明できる住民投票条例を制定したいと直接請求したのです。この大勢の県民の声は尊重されなければなりません。報道によれば、静岡県知事も条例制定ということに賛意を示しているとのことです。条例が制定されるかどうか、議会の審議を見守るべきだ、それまでは、仮処分申請云々ということで県民を騒がせ、審議の邪魔をしてはならないと私たちは考えました。そのため、仮処分債権者の募集は、議会の結論がでるという10月11日までは待とうと決めました。

私たちは、条例制定の直接請求に必要な有権者の50分の1(約6万2000人)を大幅に上回る16万5127人の方々の署名が尊重され、県民投票条例が制定されることを期待します。議会の審議を見守ります。